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尾木直樹の教育を語りませんか 第20回 

 投稿者:月刊誌「悠」02年12月号より  投稿日:2009年 2月26日(木)23時31分34秒
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  今月のテーマ「子どもとの接し方」

“世界一”育てた遊び感覚 亀山つとむさん <前編>

他人と違うことの良さ
尾木 お父さんがかなりスパルタで、小さいときから鍛えられてきたということですね。
亀山 父親が野球そのものが好きな人でしたし、厳しかったですよ。小さいときはどつきまわされました。失敗したときもそうですけど、あいさつや道具を大切に使わなかったりしたときなどにイエス・ノーのノーの代わりに手が出るんです。
尾木 自分がされたようにしてしまいがちですが、スパルタで鍛えられた亀山さんが、リトルリーグ世界一になったチームの監督としてはまるでそういうスタイルではないことに感動しました。
亀山 母親は「自分がやられたことの反対をやっているだけやな」と言っていましたね。昔はそれが許される時代だったけど、いまは楽しくないとついてこないだろうし、なでられた方が絶対できるようになると思います。ぼくは自分がやったままというのはいやだし、とくに他人と同じことをしたいと思わないんです。当たり前のことをやるだけならプロではやれていなかったでしょうし、ましてやドラフト外での阪神入りでしたので、同じことをしていてはどの選手にも勝てないですよ。
尾木 やはり、他人と違うことを工夫して創造していくスタイルは、プロ野球の中で活躍する厳しさの中からつかみ取られた生き方なんですね。
亀山 そうですね。だから勝ちたいと思うことで野球がよけい好きになりました。しんどいけど好きでいつづけるためには結果を出さないといけない。ただ、クビと言われるときは野球が嫌いになるときだと思っていました。一生懸命やっているのになんでだと思うに決まっていますから。
尾木 その厳しさのレベルというのは、プロスポーツ選手や歌手などはよくぞやっておられるなと、私などは驚異に思いますね。けがをしたら終わってしまうわけですが、そこに人生をかけていく。
亀山 そこは性格の違いかなと思いますね。逆に毎日規則正しい仕事というのは自分には無理だと思うし、えらいと感心します。そういう解釈の仕方もいいと思うんです。ぼくは自分と違うことをする人はみんなすごいと思いますし、自分の基準の中では自分が一番いいかげんな生き方だと思っています。プロでやっていたことはたいしたことかもしれませんけど、そこそこトップの学力があったらプロに行っていませんよ。することがなくてたまたま好きだったのが野球なんだと言っています。遊びの延長なんです。だから、好きなことやって金稼いでいいなと言う人もいますけど、それもぼくにしたら違う。日本は相手を評価できないですよね。相手チームのヒットに対して「ナイスヒット!」と言えない。
尾木 そうなんです。相手を賞賛できないんですよね。残念なことに。
亀山 ぼくは仕事をしている人はみんなプロだと思っています。印刷業を三十年やってきた方は印刷のプロ、ライターはその道のプロなんですよ。そんなもんだれにでもできると言われても、ぼくにはできませんし、ライターとして自分はプロじゃないというなら、なんでライターの中でトップを目指さないのかという話ですよね。

子供たちの目標のために
尾木 そういう厳しいプロの世界から引退された後、枚方のリトルリーグの監督を請われてお引き受けになり、一九九九年にはリトルリーグ世界一になったわけですが。
亀山 初めは見るつもりはなかったんですけど、メンバーが八人しかいなくてつぶれかけていたので、このまま自分が出たチームがなくなるのも困るなと。ただ土日が休みの仕事ではないので、これるときに限ってでよければということで引き受けたんです。
尾木 亀山さんが監督になればみんな集まるだろうというのも計算のうちですね(笑)。
亀山 客寄せパンダですよ(笑)。でもまあ、小学生の頃の、玄関にランドセルを投げて、バットとグローブを持って原っぱに行ったそのノリで、野球教室ではなくて、楽しく野球ごっこをやろうと思ったんです。それでその原っぱにおるおっちゃんでええわと。ぼくも気楽だし(笑)。
尾木 その気楽なノリがよかったんでしょうね。そんな中で監督として特に注意されたことはなんでしょうか。
亀山 一番は、まず野球を教えるよりもできるだけ全員の子どもと会話をすることです。「朝飯食うてきたんか」でもいいんです。これを一番大切にしました。学校でも、声をかけられると自分が一歩優位に立っているような気がして、声をかけられないと仲間はずれの気分だったりしました。監督として全部見えていないといけない中で、それなら全員と会話をしようと思ったんです。
尾木 子ども一人ひとりに気を配って、コミュニケーションを深めていくことは大切ですよね。
亀山 それと、どういう子どもかわからないのにメニューを組んでもしょうがないので、野球を教える前に観察しました。最初は一生懸命やっていますけど、二、三十分くらいで気の抜けた子が出てきますね。だから三十分きちんとやれば休憩は絶対入るけど、この三十分をきちんとできなかったら延々と続くから、どっちがいいか選択するのはお前たちだと。
尾木 なるほど、上手なリードですね。学校でも集中力がもつのは、二十分というのが一つの目安の単位なんです。小学生以下だと十五分が単位だと言われているんですよ。
亀山 そうやって頻繁に休憩や給水をしても倒れる子はいます。それを昔は体力がないで終わっていましたけど、二、三十分で休憩入れていれば、「朝飯食べてへんやろ」「昨日何時まで起きとったんや?」と、野球だけしていてもうまくならないんだから、前日はどうするのか、すぐ疲れる子は好き嫌いしていないかと言えます。
尾木 すごい生活指導ですね。小学二、三年あたりにそういう会話が通じるものですか。
亀山 通じるのかどうかはわかりませんけど、頻繁に言われていれば、いまできなくてもプロまでの行程は長いですから。たまたま世界一になりましたけど、ぼくはいい状態の選手に仕上げて、完璧なチームとして最後の試合に臨みたいとは思っていないんですよ。
尾木 そうだったのですか。
亀山 それは監督のエゴなんです。子どもたちの目標はプロ野球選手や高校で甲子園に行きたいとか、ずっと向こうにあるのに、なんでここの急仕上げに挑戦しなければいけないのかというと、大人が今年の成果を残したいだけなんです。だからぼくは小学生の間にできることをやれば、あとは中学校で学ぶことがあると思うんです。
尾木 現場で大人と子どもの感覚がずれてしまっている部分があるようですね。
亀山 大人のバランスの方も大切です。監督・コーチサイドと父母会で子どもを囲むスクラムがどこか崩れたらそこから決壊しますから、お互い少しずつ妥協点を見つけて、子どもたちのためにいい環境をつくりましょうと常に言っています。たまに「子どもの犠牲になっている」と言う親もいますけど、それなら来なくていい。野球が楽しい人だけでいいんです。あいさつやイレギュラーして顔にボールが当たったら、守るところを整備していない自分の責任なんだと、やる以前に教えることはたくさんあるわけです。それを教えずに勝つことばかりの野球が進行されているんです。だから日本プロ野球OBクラブでも指導者の指導が最大のテーマになっています。
尾木 指導者も勉強する必要があるということですね。
亀山 勉強する姿勢の指導者が少ないんです。ぼくも悩んでいるし、以前とは考えが変わってきていることもある。子どもだけじゃなくて親も、リトルリーグで集まってくる全員が常に勉強する姿勢が必要だと思います。プロ野球だって親も見てスカウトしますから、子どものマイナスになる親ではいけませんよね。それに勉強だと思ったら腹も立たない。これだけ教えているのにと思うから腹が立つんです。
 
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