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尾木直樹の教育を語りませんか 第20回

 投稿者:月刊誌「悠」02年12月号より  投稿日:2009年 3月 9日(月)22時01分52秒
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  今月のテーマ「子どもとの接し方」

“世界一”育てた遊び感覚 亀山つとむさん <後編>

できることをしっかりやろう
尾木 学校の先生は毎日子どもと接していて、点数をつけることには熱心なんですが、子どもたちに対して素朴に感動することが少ないんです。ところが亀山さんは御著書の『なんでやねん』の中では真っ正面から何回も感動されていますね。
亀山 ふだんの練習でフライを十回のうち三つとれるくらいの子が試合でとれたら感動しますよ。それを言ってあげればその気にもなるし、やればもっといい選手になるのにと言ってその気になって努力してくれればいいことです。試合は努力をした発表会だから、練習でしないことをできるわけがない。そういう気持ちで試合に臨むことが大切であって、その中で失敗したことはしょうがないんです。プロでも失敗するんですから、体力や技術的なレベルで小さいから無理というのはありますけど、努力してくれればいいんです。ただ、、全力で走るとかあいさつなど、やろうと思ったらできることには厳しいです。
尾木 速い遅いかが問題なのではなく、全力かどうかということですね。
亀山 そうです。ほかの子より速くても、十二秒で走る子が手を抜いて十三秒で走ったら怒ります。それでもレギュラーにして、ふてくされていても監督が機嫌を取って試合に使うようでは、天狗になって性格が間違ってしまう。ぼくはどんな場面でもその子を下げて控えの選手を使うようにしています。勝ち試合を捨てるとか言われますけど、その態度を直すことの方が大切ですから。
尾木 そうやって下げられた子への対応はどうされているんですか。
亀山 全員で怒ることはせず、だれかがフォローするようにしています。ぼくに下げられて弱っていれば、コーチが問いかけて、本当に間違っていたと思うなら一緒に行ってやるから謝ろうとなるわけです。
尾木 「演技」が実にうまいですね(笑)。
亀山 ぼくらは演技派ですよ(笑)。コーチは怖い、監督は楽しい人だというイメージの中で、選手があまりにもだらしないときに、わざとコーチを怒るんです。それでコーチが子どもたちにちゃんとやってくれないと俺たちが怒られるんだと言うわけです(笑)。そうすると一生懸命やりますね。考え方一つです。やらなければ怒られるのではなく、一生懸命やれば結果はどうでもいいというわけですから。いろいろとそういう大人げないこともやりながらね。
尾木 監督とコーチの巧みなレベルの高いスクラムができている。学校でも逃げ道をつくってやる教師がいるというのが本当のスクラムになるんですよね。よくスポーツだと素振りを百回、二百回と訓練主義で回数をこなせという部分がありますが、試合ではバットは十回くらいしか振らないんだから十回だけ真剣に素振りすればいいという教え方に驚きました。
亀山 練習のための練習はいらないんです。試合では絶対打ってやると思って打席に立つ子が、二百回と言われたら一、八、十三と飛ばして数えるんです。それだったら苦手なピッチャーの球を打つ真剣味で振れば、十回でもいいと思うんです。だから「もう一丁」というのも嫌いなんです。試合に「もう一丁」はないですから。
尾木 それはものすごく大事なことですよ。教育の領域でも訓練して何回も練習して身についた力が応用や発展に結びついていくと言います。否定はされるべきものではないと思うんですけど。一番苦手なピッチャーを想定して一振りするのに自分を全部込めてやっていく。そういうことのもつ力というのは非常に大きいと思うんです。勉強にも同じことが言えると思います。

一緒に遊ぶのがコツ
尾木 亀山さんのモットーの「明るく、楽しく、元気よく」の事実から、逆にいまの子どもたちはそんなに明るくなく、楽しそうではないのかと思ってしまったんです。元気がないとはよく言われますけど、そんなに緊張してしまったりしますか。
亀山 グラウンドに出たときはそうですね。昼休みとかは元気なんです。親の期待とかもあるんでしょうね。ただこれは全員がそうではないですから、チーム全体の雰囲気が、より「明るく、楽しく、元気よく」ということなんです。みんなが騒いでる中で一人だけ沈んでいてもおかしいですよね。ぼくはノリと言いますけど、それが大切だと思うんです。
尾木 そのノリを出すのに、大きな声を出そうというのを一つの方法として持っていらっしゃいますよね。
亀山 野球がやれるのがうれしいと思っている子は出てますね。自信のない子は、試合が近づくほど声も小さくなるし、暗くなっていきます。だから試合前の練習を見て、やる気のある調子のいい子を常に使って、悪い子をベンチにいれる。コーチがつくったメンバー表のままではぼくもおもしろくないです。この子にピッチャーさせてみようかなとか、たまにいい加減なひらめきもありますけどね(笑)。
尾木 いろいろされてきて、子どもを伸ばすために有効だったと思うことはなんですか。
亀山 同じ目線に立って、一緒に遊ぶ、学ぶということです。楽しい雰囲気の中で彼らを遊ばせてあげて、今日一日一緒にいて俺も楽しかったなという一日をつくることですね。
尾木 学校の先生も今日一日子どもと一緒に勉強したり遊んで楽しかったなと思えるようになれば、子どもも楽しいですよね。
亀山 それと本当に近い距離に行けるかどうかですね。上から見るんじゃなくて、実際に膝を曲げて同じ高さになる。それも大切なことですし、緊張している子には全然関係ないくだらないことを話したり、練習やめてプール行こうと言ってみたり。すると練習しましょうとか言うんですよね。それとか「もう練習やめよう。しんどいやろ」と言って、「しんどくないです」と返ってきたら「じゃあきちんとせい!」とか駆け引きみたいなのも入れてやるんですけど。
尾木 監督が子どものつらさに共感して、それを素直に表現してしまうことでうまく呼吸を合わせていますね。自分がわざと低いことを言って子どもにパワーを出させたり、子どもたちの本音を上手に引き出させるんですね 。
亀山 ぼくもサボってきた口ですから、相手の心理も大体同じだと思うんです(笑)。だから見てない振りしていて実は鏡で見ていたり(笑)。そのかわりびしっとするときにはしっかりやるというメリハリをつけることです。だから遊び感覚ですよね。
尾木 でもその遊び感覚はただの遊びじゃないですよね。その呼吸を盗み取るのは難しそうですね(笑)。
 
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