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疾走する球魂:第91回全国高校野球千葉大会/中 千葉明徳高 /千葉
◇「らしくない」強豪 楽しさと厳しさが同居
千葉市中央区にある千葉明徳高校が注目を集めている。春の県大会で優勝し、関東大会では優勝校と0−1の接戦を演じた。これまで夏の県大会はベスト16止まりだったが、今年は優勝候補の一角。強豪校にありがちな勝利至上主義とは一線を画し、楽しさと厳しさが同居するユニークなチームだ。
ある日の守備練習。宮内一成監督(29)がノックを打つ。本塁前のゴロに対し、投手が雑なボール処理でグラブトスをした。怒号が飛び交ってもおかしくない場面だ。しかし、響いた声は「おいおい、しっかりな」。笑顔の部員が、からかい気味に飛ばしたヤジだった。「だめなときは怒鳴らなくても自分で分かるでしょ。高校生なんだし」。宮内監督はさらりと言った。
3年生もグラウンド整備を率先し、和気あいあいと後輩と冗談を言い合う。東海大で野手として全日本大学野球選手権に出場した宮内監督は「野球を楽しむ姿勢を学んでくれれば」と話す。打撃練習でも自らバットを振る。紅白戦では選手のふがいないプレーを見て「おれが出る」と急きょ打席に立ち、外野フェンス直撃の二塁打を放った。選手の一人は「監督は自分も楽しみながら見本を見せてくれてるんでしょう」と話す。遠征の帰りにバスを途中で降り、学校までの約15キロを監督とチーム全員で走って帰ったこともあった。
明るい雰囲気は試合を勢いづける。快進撃した今春の県大会で、誰もが「勝てないだろう」と思っていた準決勝。相手は、センバツで甲子園に校歌を響かせてきたばかりの習志野だ。明徳は持ち前の陽気な雰囲気と堅守で接戦を繰り広げ、延長十回、サヨナラ勝ちを収めた。森田直樹主将は「うちはノリのチーム。そこは自信があります」と話した。
厳しい一面もある。試合に出場できるのは「まじめな部員」。宮内監督は、制服の着方や授業態度など日常生活がだらしない部員はプレーが良くても出さない。最低限の自律をきちんとできる能力は野球でも生きてくると考えるからだ。今年2月には「授業中に寝ている者がいる」などとして部全体を1カ月、練習させなかった。
昨秋ベンチ入りしたものの春と夏は登録メンバーから外れた初芝竜之介選手(3年)は、監督に生活態度を指摘されたという。「まじめに頑張ってるやつは結果がついてくると気づきました」。最後の夏は打撃投手を買って出ている。
「甲子園優勝を狙えるようなチームじゃないですから。勝つことも大事ですけど、それだけでもしようがないでしょう」。宮内監督はひょうひょうと語り、思い出したように「そういえば今年は、本気を出した試合には負けてないなあ」とつぶやいた。
グラウンドでは打撃練習が続いていた。にこやかな表情で、空気を切るような鋭いスイング。このコントラストが明徳のチームカラーを示しているように思えた。【黒川晋史】
毎日新聞 2009年7月5日 地方版
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