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千葉ロッテマリーンズ前監督 ボビー・バレンタインさん
ボビーマジックと呼ばれた変幻自在の采配、米国流の徹底したサービス精神は日本の野球に新風を吹き込んだ。計7年の監督経験を踏まえ、離任前に日本野球とその将来を語ってもらった。(聞き手 金島淑華、秋山惣一郎)
――本場、大リーグの監督として実績がありながら、「日本のプロ野球を愛している」としばしば語られました。本当ですか。
「選手たちは一生懸命練習するし、特に守備面で正確なプレーをする。バッテリーは、配球を戦略的に組み立てて打者を打ち取ろうとする。試合前のミーティングでも、スコアラーの情報を熱心に受け取り、理解する努力をしています。これらは大リーグではあまり重視していません。細部にまで心を配る日本の文化、国民性が表れていると感じました。もう一つ、球場の雰囲気が大好きでした。ファンは球団と選手に思い入れを持って熱心に応援する。試合中、ファンは選手の活躍をたたえ、選手はその声に手を挙げ、一礼して応える。こういった関係は、特に好ましいものでした」
――その日本野球に吹き込もうとしたものが「エンジョイ」でしたね。なぜ、勝つことを求められるプロの選手たちに「楽しめ」と言うのですか。
「日本の野球界で、特に年配の人は『楽しんでいる』と聞くと『真剣にやっていないのではないか』『日本の文化としての野球を冒瀆(ぼうとく)することではないか』と感じるようでした。だが、そうではない。練習を積んで試合に臨めれば、自信も勇気もわいてくる。失敗を恐れることがなくなり、瞬間、瞬間の厳しい勝負をも楽しむことができるようになる」
「日本では、選手が失敗を恐れる気持ちが強いと感じます。選手の周りにいる考えの足りない人たちは、結果だけを気にする。すると選手たちも結果、結果と考えてしまうのです。打者が試合で最も楽しい瞬間は、いつだか分かりますか。相手投手の最高の決め球を、自分の最高のスイングでとらえた瞬間です。ホームランという結果を喜ぶのではなく、投手を研究し、練習を重ねた結果、最高のスイングができたことを喜ぼう、というのが『エンジョイ』の意味なのです。プレーをエンジョイするようになれれば、結果はついてくるのです」
――だから、日本一になった05年、優勝争いの経験がない選手たちに「このプレッシャーを楽しめないなら、他の職業に就いた方がいい」とおっしゃったのですね。エンジョイする、という考えは、日本に浸透しましたか?
「07年10月、千葉マリンスタジアムでのクライマックスシリーズ、対ホークス第3戦の試合前にサブロー(外野手)が、私のところにきて『let's have fun(楽しみましょう)』と声をかけてくれました。サブローはこの試合で決勝三塁打を放ち、『打席を楽しんで、ヒットを打ってやろうと思っていた』とコメントをしました。私の思いが、通じたと思った瞬間です。だけど、今月7日の日本での私の最後の試合で、唐川(投手)は今季最悪の投球で敗戦投手になりました。私のために勝たなければいけないと考えて、エンジョイできなかったのでしょう。彼には、良い教訓にしてほしいと思います」
50年、米国生まれ。大リーグ・メッツを率い00年、ワールドシリーズ出場。95年と04年〜09年、ロッテ監督。05年に日本一。日米通算1610勝。
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